＋＋＋2nd.　Discovery「蜃気楼の少年」

サイドストーリー　＜変わったやつの観察記録＞

　

　

「あのーー、なんか視線が痛いんデスが」

　俺の様子を伺うように振り返ると遠慮がちに声をかけてきやがったそいつの名は、九龍　尚樹（クリュウ　ナオキ）とかいう転校生だ。

　コイツは暗視ゴーグルに学ランの上からアサルトベストを羽織り、銃刀法ってなんですか？といわんばかりの装備で、夜な夜なこの天香学園の墓地の下に広がる遺跡を探索している。宝探し屋＜トレジャーハンター＞？あんなやつが出来るなんてまったくもっておかしいぜ。

「あー？気のせいだろ。んなことよりとっとと進みやがれ」

　へいへい‥としぶしぶ返事をしながら、弾を補充している。

　今夜は本来の目的のためでは無く、クエストだかなんだか知らんが、依頼をこなすために潜っているそーだ。しかも「今日は私的な用事で二人に迷惑かけたくなかった」などといって一人で潜るつもりでいやがった。なんとなくイラついたんで延髄蹴りをおみまいしてからつき合ってやっている‥‥が、かれこれ３時間以上経っている。一体いくつ依頼を受けやがったんだよコイツはっ。

　またイライラしてきたのでアロマを深く吸い込み落ち着こうとした。ゆっくりと紫煙を吐き出す。すると寮でのある出来事を思い出していた。

　九龍は、転校してきて間も無いが持ち前の愛想の良さで他の生徒とも仲良くなりはじめていた。その仲良くなったやつが（ジジ臭ぇな）将棋を持っており、九龍が対戦しているところをみかけたんだが‥なんなんだアイツは。やつは勝ち負けなぞほったらかしで駒をいかに手に入れるかを楽しんでいるようだった。バカか？

　その他の普段の行動を見ていても「無駄とか余計なことが大好き」だということが良く分かる。おまけにやつ自信は否定しているが「厄介ごとも大好き」なようだ。口では参ったなぁとかいっている癖に目の輝きが違っている。あれは心の底から楽しんでいる目だ。トレジャーハンターは天職ってか？

　まったくもってアブなっかしい。

　ふん、下手の横好きめ。ミイラとりがミイラにならなきゃいいがな。

　

『ゲット・トレジャー』

　本日五度目の機械音が響き渡る。いいかげん、そろそろ帰れよ。銃での遠距離攻撃ばかりだが敵が多い時は一度に倒しきれなかったやつから攻撃を受けている。お前は高校生だろ。なんでそんなにケガつくってるんだよ。あれか、お前はキズ製造工場でこれがお仕事なんだろ。そーかそーか、そんなキズだらけになりたきゃ俺がやってやるよ、などと思っていると次の扉に手をのばすあいつが見えた。

「バカ！お前まだ進むつもりかっ！！」

「えっ？」

　驚いた小動物のような表情でこちらを振り返る。人畜無害そうなツラしやがって。

「んー、依頼これで最後だしね。せっかくだから終わらせたいから」

　なぜか優し気に微笑む表情が子供をあやす時の表情に見えてしまいイラついた。

「ほーー、こんなボロボロでいけるのかよ。あー？」

　扉と俺の靴底とで九龍をサンドし、グリグリといじめてやった。

「ぎゃーっ皆守の愛が痛い〜〜っ」

「ば‥‥っ、ばか言ってないでさっさと片付けちまえっ！！」

　俺は勢い良くやつを蹴り出した。

　赤貝の眠る部屋とかいったか？そこにはやはり化人とかいう胸クソ悪いヤツらがうようよしていた。

　九龍の表情がスゥッと変化する。「ぎゃー、いっぱいいる〜」などと言いながら目が笑っている。体力に余裕が無いのか、さっきまでは全然使わなかったガスＨＧを放り投げマシンガンを的確に打ち込み、片方の通路の敵を一掃。男としては華奢な体を優美に反転させ、もう一方の通路の敵へと向かってゆく。

　おいっ、あれじゃ攻撃をモロに食らうっ！　

　

　

『ゲット・トレジャー』

「あっははー、これで終了〜〜っぐふっ」

「なーにが、終了〜〜だ。のんきなもんだな」

　疲れて倒れこんだ九龍の腹の上に座ってやる。

「あのー‥‥非常に苦しかったりして辛かったりなんかしちゃったりするんですが」

　なんだか妙な言い回しの抗議はシカトだ。

「お前な、なんであんなに敵のとこにつっこんで行くんだ？ん？？」

「えーと、バディは危険な目にあわせないって誓ったから」

「は？」

「一気にケリつけちゃわないと皆守まで攻撃されそうだから」

「‥‥‥‥‥‥‥」

　ばかだばかだとは思っていたがほんとにバカだとはなっ！

　俺が傷付かないように？　俺なんてかばってなんになるってんだ？

　ボロボロにキズ付いてまで守られる人間の気持ちって分かるか？

　ふざけんなっ！！

　立ち上がると、九龍の横っ腹にいっぱつ蹴りを入れ、もだえ苦しむやつの襟首をひっつかみ魂の井戸まで引きずっていく。

　あーくそっ、面倒なヤツに関わっちまったぜ。

　

　

　

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